子育て Q & A
 Q  4歳・幼稚園年少児(男児)のお母様からのご質問
私は4才の息子を持つ母親です。我が息子は現在幼稚園3年保育年少さんに在籍しています。最近戦いごっこがクラスで流行って来ました。クラスにいるリーダー的な男の子が良い役で、その子供の取巻きが良い役2番手、3番手となり、我が息子が悪者役を毎回している事が最近ハッキリ分かって来ました。

我が息子がリーダー的の男の子に「一緒に遊ぼう」と言葉がけしても、リーダーが「いやだ」とか無視すると取巻き組も同じ行動をしているようです。悔し紛れに息子も叩いたりなど、小競り合いが耐えません。要は、悪者役に当てはめ、遊ばないと言うのです。

私も状況を影から見ていると、随分酷いなぁと思う事もありました。一緒に遊ぼうとグループがいるすべり台に息子が登ろうとするとグループの数人が母親達の見てない場所で息子の手をグーで叩き、登らせまいとする様子や、「入れて」と言っても「行こう!」と皆を引き連れて行ってしまったり。とうとう息子も涙ながらに「入れてって言っても入れてくれないから、僕は叩いちゃった」と訴える始末。

子供の世界に親が踏み込むのもどうだろうかと思いつつ悩んでいたのですが、今日、他のお友達と遊んでいた時にやっぱり息子が悪者役に・・・。リーダー的な子供の言動が浸透して真似をしているのか、我が息子に原因があるのか・・・。悩みだしてしまいました。

このまま悪者役が定着してしまったら・・・。加えていつもリーダー的な子供とその取巻き組に我が家の息子が手を出した時に、そのお母さま方が見る為、悪者は乱暴な我が子となる訳です。

実際は「入れて」「だめ」「君とは遊ばない」が前にあるのですがその部分を見ていてくださらないのです。私としてもホトホト疲れてしまいました。今は出来るだけ、距離をあけた方がいいかなと考え、リーダー的な子供とその取巻き組とは幼稚園外では子供同士、接触させないようにしました。

相手のお母さんは子供の世界の問題は子供で解決がポリシーの様なのでこちらの希望、願望を伝えるにはどうすればいいのかと考えている状況です。何か良いお知恵がありましたらお教え下さいませんでしょうか。

お相手のリーダー格の男児のお子様ですが上に御兄様もいらして御兄様も同じような諍いがあったと他のお母さま方からお聞きしました。

随分と泣かれたご家族が多かったとか・・・。また、我が子が一番ターゲットにはなっておりますが他のお子様にも無視や、「A(息子)とは遊ぶな」と命令している事が分かりました。

同じクラスの中でもいじめられているお子さんもいらっしゃいましたが我が子が特にと言う状況です。我が子と同じ、5月生まれで大変活発です。

我が子はお友達と遊びたいと言う願望が大きく、誰でも「入れて」「いいよ」という図式が成立すると思っている様子です。あまり手を出す子では無かったのですが、戦いごっこの悪役に当てはめられたせいか、叩くと言う行為が癖になってきており、頭を傷めております

幼稚園でこれだけ陰湿と言っては何ですが小学生のような子供の世界に正直いって戸惑っております。また、私も未熟な母親ですが、今のお母さま方は「みんな仲良く」という意識がないのでしょうか?

私は先々も考え、小さいうちから世の中、個性があって良いし、それをお互い認める子供になって欲しいと思って今迄子供にも話して来ましたが、これは理想と言う事で完全に否定された気が致しました。この時代、子育てのしにくい環境なのですね。

お手を煩わせてしまい、申し訳ございません。どうぞ、良いお知恵を頂ければと思っております。

  相談者の方を仮にAさんと申し上げます。

 私も2児の母親ですからAさんの気持ちは痛いほどよく解ります。が、その事と、相手の母親に対し「相手のお母さんは子供の世界の問題はは子供で解決がポリシーの様なのでこちらの希望、願望を伝えるにはどうすればいいのかと考えている状況です。何か良いお知恵がありましたらお教え下さいませんでしょうか。」と続くことに私は疑問を持ちます。

 なぜなら、話して解ってくださる相手であれば、とっくにAさんの気持ちを理解してくださっているでしょうし、子育てに対する考え方が違うのであれば、子供が目の前にいる以上、トラブルのたびにストレスを感じ続けることは必至だからです。

 Aさんは「お互い認める子供になって欲しいと思って今迄子供にも話して来ましたが、これは理想と言う事で完全に否定された気が致しました。」と、おっしゃっています。「個性があってよいし」とおっしゃっているのに、相手の方がご自身と違う考え方だということに、強い反応をしておられます。これから、母親同士仲良くなれる方のお子さんとばかり我が子が付き合ってくれるわけではありません。幼児は自分と違うものを多く持っている子に引かれるケースも多いのです。『遊ばせたくない』その思いを強くしてしまうと、いろいろな人がいるという事を体験する機会を摘んでしまうことになってしまいます。

 ここで重要なのは、幼児同士であれば、指導により価値観が今からでもいくらでも変えることが可能ですが、大人、特に母親の価値観を変えるのは本当に難しいということです。

 長年、母親の指導をしてきていますが、成人するまでの育ち方性格などで、一口に母親といっても考え方は千差万別です。子供の行動一つとっても叱る方叱らない方さまざまです。もちろん、その行動が望ましいかは別ですが。母親としてみなさんさ精一杯考え生活し悩んだりしています。でも今母親としてやっていることが正解かどうか、誰にも確証はないのです。だからこそ、自分の育児に不安を持ちつつもプライドを持って『これでいいんだ!』と、自分に言い聞かせながらやっている部分があるのではないでしょうか。

 また、母親は「我が子の事を言われるぐらいなら、自分の事を言われたほうがまだ良い」という感覚を持っているのではないでしょうか。Aさんが息子さんを思うように相手の方も我が子の事を思っています。他人から言われて認めることもいやだとは思いませんか(交代に良い役悪役をやるのは認める事になります)。

 最近、幼稚園で乱暴な(危害を及ぼす)お子さんの話をよく耳にします。そのようなお子さんの母親の多くは、途中から手におえなくなり、知らん振りをする傾向が多いのです。対外的には小声で誤ったり、申し訳なさそうにしていても、心の中では子育ての結果としての事実を認めたくない、もともとこの子が悪い子なんだからと子供のせいにしてしまします。これはもう開き直りです。

 母親に我が子を律する力が足りないケースもあります。母親の側の「やっていい事、悪いこと」の価値観がずれていないにも関わらず、今回のようなことをする場合は、家の中でもご自分の価値観をお子さんに伝え切れていないのです。そんな場合は、『我が子がやっていることは悪い事ではない』と思い込むしかありません。どちらにしても母親としての自分を否定したくない気持ちが働くのです。

 相手もAさんと同じように教育の専門家ではありません。解ってもらおうと努力しても、母親同士のトラブルになるだけです。相手の母親に対しなんらかの行動を起こすのはお勧めできません。


 さて、ここからは対処法です。

 まず、Aさんに辛口のコメントを一言。子供は家庭の中だけで育つものではありません。社会の中からの刺激も多いに受けて育ちます。相手の方が思った答えをしてくれなかったからと「否定された」とおっしゃるのは、ご自分のおっしゃっていることに反しますしマイナス思考そのものに感じられ、正直がっかりしてしまいます。大切なお子さんがどのような人間に育つかの基礎を形成している今、母親としての自覚を持ち、どうしたらそのような世の中でも我が子がまっすぐ育つかを考えていただければと思います。

 とは言っても簡単に誰でもできることではないので「出産は本能・子育ては学習」という観点から、私もこのように子育て相談をしているわけです。怒ったりご自分を責めたりしないでくださいね。

 今、常識が危うい時代になっています。「他人に迷惑をかけない」「自分の事だけを考えず、自分を取り巻く周りの人の気持ちもおもんばかって行動する」このような考えが当たり前なのが日本の社会でした。が、今は電車の中で幼い子供のために大人二人分占拠したり幼児の足が他人の迷惑になっても知らん顔。よい意味での他人の目を気にするという感覚が希薄になってきています。母親だから自分の子をちゃんと育てようというより自分たちが楽しければよいという風潮があります。これではしつけも何もありません。そんな母親や社会に対し、子育てがしにくくなったと嘆いてばかりいてもなんの足しにもなりません。なぜなら、そんな育て方をして立派に育つはずがないからです。

 それより、そんな中でも周りに流されず、Aさんの価値観を我が子にしっかり伝えるにはどうしたらよいのかというご質問をしてほしかったと思います。

 幼児は生活の中からいろいろな事を学習します。その結果としてある一定の価値観を身に着けていきます。幼稚園・町内などの地域社会と幼児に刺激を与えますが、現代では各家庭の価値観が一番優先されます。つまり、幼児はバラバラの価値観を持って家の外で行動を始めます。そこで、いろいろなトラブルが起きてくるわけです。

ここで、一番問題にしなければならないのは幼稚園の担任です。幼稚園の中は西部劇の世界と一緒です。力のある保安官が居れば、ならず者がやってきてもそれなりの対処をし、町の中の平安を守ります。が、力の無い保安官の場合、悪がのさばりル―ルを守る善良な市民は肩身の狭い思いをして生活をする事になります。また、悪い保安官はならず者と手を組み、町の治安は無いに等しくなります。

もし、担任の教師が、おっしゃるようなことをさせ放題にしているとしたら、本当に問題です。幼稚園の年少であれば、まだまだ良い方向に持って行こうとしてもさほど大変ではないはずです。むしろ、担任なり園長になり相談なさってみてはいかがでしょうか。(もし、なさっていたら、以下の点に照らし合わせてください。状況が好転していないのは以下のような理由からです)

 その際、気をつけなくてはならないのは、担任なり園長が良い保安官ではない場合です。下手にうるさい事を言ってくる保護者だと思われるのであれば、相談しないほうがよいと思います。


 さて、ここで、今一度お子さんのことに振り返ってみましょう。まず言える事は、リーダー格の子ども(仮にO君と呼びます)にとって息子さん(仮にA君)は特別な存在であるという事です。なぜなら同じ5月生まれだからです。年少児ぐらいだと、月齢の差はそのまま体格の差や知恵の差となりがちです。O君は、お宅のお子さんを排除する事で自分の地位を守ろうとしていると考えられます。いじめの構造の多くは、自分より弱い存在を作りいじめる事で自分の地位を高く保つ、という形をとるからです。

 年少児がそのような知恵を持つのは末恐ろしい限りですが、それだけ世の中全般がそのような情報(テレビ・ビデオ等)に溢れているのだと思います。

 O君がこのまま成長した時のことを考えてみましょう。単純に考えても、よい人格を持った人間に育つとはとても思えません。本人の遊びたがらない子とは遊ばなくても良いと云う考え方は一見その子の意思を尊重しているようですが、将来いろいろな意味でスキキライが激しくなったり、やりたくない事はしない子に育つ可能性が大です。また、ある程度の知恵があり人生はそこそこ成功したとしても、平気で人を排他するようでは人望もえられるはずもなく、思いやりとは縁遠い子になってしまいます。母親があとになって育て方が間違ったと思っても遅いのです。

 相談者の方のように、我が子がいつも同じ図式にいるのは見ていられないという気持ちもよく解ります。そして、Aさんのように降園後は遊ばないようにさせるのも一つの手です。我が子の様子をしっかり観察し、臨機応変に、そして慎重にある程度は操作することもよいと思います。が、くれぐれも、行き過ぎてご自分の気に入った子、気に入った母親の子としか遊ばせないという傾向にならないよう、気をつけてください。

 子どもの場合、似たようなものを持っているから気になり、仲が良いからいじわるをする・仲良くなりたいからいじわるをする、自分にないものを持っているのが魅力的に映る、だから遊びたいというのも事実だからです。


 他の子にも叩くようになったとのこと、ご心配ですね。あくまで戦いごっこの中でだけならよいと思います。ただし、首から上は絶対にやめさせましょう。目や耳など直接大変なことにつながる部位だからです。また、おなか等同じ部位を続けて攻撃することもやめさせてください。同様に相手にダメージを与えるからです。男児の場合、このような戦いごっこを通して、自分のパワーを発散させたり相手に対する加減を知って行ったりするのです。ですから、戦いごっこそのものは、叩くようになったからとやめさせないでください。

相手が叩くから叩くのは年少児では無理もないことですが、戦いごっこ以外では、「叩いた時やめて!と、強く言ってみてね。」とか「相手のお友達に怒りたい気持ちは解るけど、叩き返したらお口はいらなくなっちゃうわね。お口は自分の気持ちをいったりしてお話し合いをするためにあるんでしょ。どうして叩くのか解らないままになっちゃうわよ。」と云う様に話してください。

 ここで問題になってくるのが、Aさんの価値観がどこにあるのかです。男の子は叩かれたら叩き返すほうがよいとお考えになるか、どんなケースでも叩き返したら叩くのはよくないとお考えになるかです。どちらを選択するかも、それぞれの考え方だと思います。私の場合は後者ですが、今日のような社会状況の中では必ずしも後者が良いと言い切れない部分があるのは、残念です。

 Aさんのお子さんが、自分に自信のもてるものができるといいですね。かけっこでも、お絵かきでも、歌でもなんでもよいのです。これから、育ててあげてください。何かが得意になるには、それだけの努力が要ります。その過程の中で、自分をコントロールする力も身につけられますし、自分のなすべきことも見つけられるようになると思います。そのための環境作りをAさんも頑張ってください。

 このさき、お子さんを通しいろいろな悩み事が起きてくると思いますが、母親としてのAさんが『どんな時でもお母さんはあなたの味方よ』という意思で見守ることが、大切です。園や小学校、お子さんはどんどんご自分の目の届かない時間を過ごすようになります。その時、どのような行動をとるかはお子さんご自身です。安心して本人に任せられるよう、家庭でよくコミュニケーションをとり、日頃からご自分の価値観を伝える努力をなさってくださいませ。

所見  長いご質問でしたが、このご質問にはいくつかの問題点が含まれて居ます。まず、@お子さんが与えられた環境の中で、どのように生きていったらよいのか、お子さん自身の問題。Aもう一点は我が子を軸にした相手の母親に対する問題。Bそれと我が子に問題が起きた相談者ご自身の母親としての問題です。    

 子供を通して何か問題が起きた時、ご自分を含め大人が何か行動を起こすのは、よほどの時と考えになったほうが良いと思います。相手のお子さんや母親に対しいろいろ考えると、春名ちゃん事件のようにならないとも限りません。

 それより、自分の抱えている問題のどこが、本質で、どこが一番問題なのかをお考えになってください。

Aさんのように分別のある方は、すぐに「@我が子がちゃんと育ってくれること」が一番重要な点だということに、すぐにお気づきになるはずです。

頭の中にはAそうでない部分がうずまいていても、Bご自分がしっかりすることが長い目で見れば、大事だということにも気づかれると思います。

 Aさんのほかにも、同様の問題を抱えている方はたくさんいると思います。また、そう云う方たちにとって、子育てがしにくい世の中になってきているのは事実です。が、それでも、素直で人を認め自分を表現できる子は、着実に育っています。今は幼稚園という狭い人間関係の中ですが、お子さんの成長と共にご自分の価値観と同じ価値観を共有するお友達も必ず出てくるはずです。それまで頑張ってください。