子育てって… 

   

「サイコロが何個取れたかな。お母さんはいくつ持っているでしょう」松戸市の「幼児教室母と子のオムニパーク」。五歳クラスでは、十個のサイコロを母親と競争で取り合い、いくつ取れたかを申告するゲームが行なわれていた。

 同教室は、私立小学校や幼稚園を目指す“受験塾”の一つで、都内から通う人も多い。「もし合格できなかったら、私たちのスキルが至らなかったということで、授業料を全額返金致します。」福岡潤子室長は強気だ。

 子供のブランド化現象として、一九九四年に「お受験」を題材にしたドラマがヒットしたが、最近の受験理由はそのころとは少し変わってきている。

 中央教育審議会が昨年四月に出した報告では、お受験を「親の安易な安全思考や有名校への進学志向などによるもので、過保護、過干渉の傾向の表れ」としたが、福岡室長は「学級崩壊など、公立校の荒れを敬遠して、私立校を目指す層が広がっている」と指摘する。

 同教室でも、「ぜひ私立へ」という声を踏まえ、市川校を受験専門校とし、今年四月から一歳クラスをスタートさせた。

 松戸市の主婦、加代さん(38)(仮名)は、四年前に長女の小学校受験を経験した。消極的だった長女の性格を直そうと一歳から幼児教室に通わせていたが、そうした中で「子どもがのびのびと過ごせる小学校」をと考えるようになったという。

 受験を決めてからは、「海に行っても、会を拾って生態を調べたりと、受験を念頭に置いた生活を送った」と振り返る。「何もそこまで」と言う人もいたが、現在、私立小学校に楽しげに通う長女を見て、この選択に満足している。

 お受験に疑問を投げかける声は根強い。習志野市の主婦、智子さん(34)(仮名)は三年前、長男を受験塾に通わせたが、二か月でやめた。車は何で動くのかという質問に、長男が「エンジン」と答えたところ「ガソリン」が正解と決め付けられたためだ。智子さんは「受験テクニックの習得には意味がない」と切り捨てる。

 とはいえ、加代さんによって、合格通知以外にも得たものは多い。「受験がなかったら、あれだけ子どもの言動を気にしなかった。と加代さん。「子育てのスキルがない母親たちが、子育てから逃げている」(福岡室長)傾向が強い中で、子どもときちんと向き合う手段として、お受験が役立っているのも事実だ。

                    (津秦 幸江)

文中の松戸市の主婦加代さん(仮名)は当教室の保護者ですが、習志野市の主婦智子さん(仮名)はオムニパークの方ではありません。

            


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