5、自己意識と他己意識

  他己意識ってなに?と思われた方も多いかと思います。これは私が子供の指導を通じて考えた造語なのです。

幼児の場合幼いため自己分析をする事が出来ません。しかし自分の存在がどのようなものかは自分の周りの大人を通してしっかり理解しています。他人により自分は何であるかを判断するイメージ、つまり他己意識です。

この他己意識は幼児の行動を大きく左右します。例えば子供が花壇に咲いている花が欲しいと思ったとします。いつも「良い子ね」と言われている子は『私はいい子。花壇のお花を取るのは悪い子、私はしないわ』と思うでしょう。反対に悪い子だと言われている子の場合はどうでしょう。『花壇のお花を取るのは悪い子、でもいいんだ。僕はどうせ悪い子なんだから』と摘んでしまうことでしょう。

黒柳徹子さんの窓際のとっとちゃんに出てくる校長先生の「君は本当はいい子なんだよ」という言葉で彼女の生き方が変わった話はまさにこの他己意識の作用なのです。

 

人間はどうしても他人に対して何らかのイメージを持ってしまいます。そしてそれは悪いものであっても無意識に表れてしまいます。大人はそうしたものを読み取り対処を講じられますが、他己意識が強い幼児はそれをそのまま自分自身に結び付けてしまうのです。

ですから私はオムニパークにどんなに心が荒れている子が入室してきても動揺しません。先入観を捨て『この子の本質はどこにあって、何がイライラの原因なんだろう。』と考えます。「そう、これはしたくないの。しなくてもいいのよ。でも今○○ちゃんが嫌だって言ってお人形さんを投げたでしょ。本当は○○ちゃんはいい子なのにポイってしちゃったのね。困ったわね。」このように相手をポジティブに捉えて接します。すると必ず心を開いてくれるものです。

子供に対する悪い先入観を廃し相手の他己意識をポジティブな状態にした上で接すること。それが子供の心を掴む上で最も重要なテクニックなのです。

 

そこで親はまず子供に対し良いイメージを持つように心がけることです。とはいえ我が子の良い点より悪い点の方が多く目に付いてしまうものです。しかし、そんな時でも子供に悪い他己意識を植え付ける「まったくこの子は愚図なんだから」「ばかっ、なにしてんの」というような言葉を言わないことです。こんな言葉はどうか悪い子になってくれと言っているのと同じなのです。お気を付けください。

 

                          次へ