気力を育てるU

与え過ぎのおもちゃを片付けよう

 

 

 今から十年以上前、子供たちの無気力・無感動が問題になりました。言われれば一応大人の言う通りにやってはみるが、自発的にいろいろなことに興味を示さない或いはやる気がない子供が増えていると言われました。が、現代では面倒がって何か行うことさえ拒否する子供が増えています。

 ではなぜ、子供達が変化してきたのでしょう。現代は昔に比べモノが溢れています。例えば、おもちゃ一つとっても親が買い与えるおもちゃのほかにいただきモノもあり、幼児のいる家庭には必然的に相当数のおもちゃがあるはずです。また、テレビを筆頭に見るもの聞くもの手にするものと、様々な刺激が押し寄せ、興味を示す前に与えられてしまいます。つまり、与えられ過ぎが元凶と言えます。

 『うちの子はビデオが大好きで、何時間でも集中して見ています。』とおっしゃる方がいます。確かにビデオを見ている時の子供は、一見食い入るように見ています。しかし、頭の中は違います。次々映し出される映像を目で追い、流れている音を聞いているだけで、自ら頭を駆使している訳ではありません。つまり、あくまで受動態で細かな部分までリアルに目に入ってしまうため、想像する余地が残されていないのです。

 その点、絵本や紙芝居の場合は違います。入ってくる言葉を耳に、今見ている場面を自分の脳裏で自由に動かし、次々と場面を想像しているのです。能面は、面を少し上向きにしたり下向きにすることで、悲しそうな表情や嬉しそうな表情を作り出すと言われています。見る人にとって、自分の思いを投影するおもしろさがあり、能の魅力の一つと言えるのではないでしょうか。このような状態の時は脳が活性化し、楽しいと感じているのです。

 五感を刺激し自分で組み立てたり壊したりできるおもちゃが少数派となり、決まった遊び方しかできないおもちゃが増えています。脳を楽しませることのできないおもちゃにばかり囲まれ、なんとなく時間を過ごしていては、かえって幼児の心の成長を阻んでいるかもしれません。

 「空腹は最大の調味料」という言葉の通り、満腹の時には逆に何を食べてもおいしくは感じられないものです。幼児にとって本当に必要なおもちゃはどれなのか、自分の好きなモノを手に入れる喜びを知らせるにはどうしたらよいのか、食傷ぎみにならないように与えるにはどのぐらいの量がよいのか考えてみましょう。そして、この際、目の前の多くのおもちゃを子供の目の届かないところにしまいこんでみませんか。

                       (文、福岡潤子)


          

 

     戻る