気力を育てるT

気力は相手に伝わる

 9月の敬老の日に因んだ話を幼児にしていた時『敬老の日、本来の意味にふさわしい年寄りに、自分がなれるのかな』と、ふと思いました。今の世の中、長生きしている方達は増えていますが、敬愛できるお年寄りとそうではないお年寄りとがいるような気がします。このまま平均寿命が伸び、病や事故にでも遭わなければ我々も80歳以上生きる計算になります。医学の発達により、子供たちの時代には平均寿命が百歳なんて事になるのかもしれません。その時この子達はどのような事を思い、どのような生活をしているのでしょうか。

 高校時代の担任の先生からご連絡をいただき、先日、思いきってご自宅を訪問しました。さすがに杖をおつきになっていましたが、89歳というお年にもかかわらず坂や階段をずんずん登り降りされていました。そして、担任していただいた定年退職当時と変わらない張りのあるお声で、いろいろ話して下さいました。

 某大学で教授をなさった時の事、研究論文を出版なさった時のエピソード、現在は過去の論文を整理したり新たに校正しているとのお話です。お隣でお聞きになっておられた奥様もまた目を輝かせてご主人である先生の学績について話されるのです。今でも徹夜までなさることや、奥様のご質問に先生が丁寧に答えられいつのまにか「水野学校」(先生のお名前が水野先生)が始まる事、雨の日も風の日も毎日40分の散歩は欠かさないとの事など。

 先生は小柄できゃしゃな方ですし若い頃原爆にもお遭いになっています。数年前には脳腫瘍の手術も経験されています。『なのに、なんでこんなに前向きで明るくておいでなのだろう』『亡くなるまでこのように活き活きとした毎日を過ごせるのが、本当の幸せなのではないだろうか』そして、『自分もまたお二人のように生きられる可能性もあるのだ』と希望を持つ事ができ、明るい気持ちで帰途につくことができました。体の健康は大事です。が、「病は気から」という言葉もあるように、気力を育てる事はさらに重要だと言えます。

 子供たちの場合も、気力のある子とそうでない子で結果はまったく違ってしまいます。今現在の結果を出す事よりも、幼児の場合はこれからどれだけ自分のモノにできるかが大切になってきます。学習一つとってもやる気、根気という言葉のとおり、「気」の力次第だと言うことができます。

 昨今就職試験だけではなく大学入試ほかも面接重視になってきています。気力のある人間は今現在の実力がなくても、相手に多くの可能性を感じさせるからです。そして気力の在る無しは、確実に相手に伝わるからなのです。つまり、気力を育てておく事は人間教育の基本で、一生を左右すると言っても過言ではないと言えます。

                       (文、福岡潤子)


        

 

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