今年の受験を終えて

 

 4月の頃はおすわりする事もできずにいた1才児が、秋も深まった今頃になると、食い入るように絵本を見つめたり、小さな手でハサミを扱ったり、かわいいおしゃべりをたくさん聞かせてくれるようになります。

 このように幼児の成長はめざましく、1〜2才児の頃ひっくり返って大泣きしていたような子も、気難しく口を真一文字にして大人の言葉に耳を貸さない子も、年中年長と大きくなるにつれ皆そんなことはなかったかのように落ち着いた表情の素晴らしい子供に育っていきます。

 幼い頃に入室した幼児は、1年1年着実に過ごす事で、特に受験を意識する必要もなく実力を身につけていきます。が、考査まで1年を切った状態で入室なさる場合はそうはいきません。

 考査そのものが、ペーパー重視という型を問うものから、内面の発達や伸びる芽をしっかりと育んでいるかを問われるものに変化しています。慶応・青山学院と始まったうねりが年々広がりを見せている現在、付け焼刃では通用しない難しさもあるという認識を、いやでも持たざるを得ません。

 今回手記を寄せてくださったお母様(合格保護者の声参照)のお知り合いの方は、幼い頃より熱心で受験に向けて親子で頑張り、なおかつ日頃の大手進学塾での考査の結果がよいものであったにもかかわらず、本番では悪い結果だったそうです。

 このようなケースは小学校受験に関わらず中学受験でも他の受験でも見られるケースで、特に珍しいものではありません。問題は、その後ご両親でどんな話し合いをされ、お子さんの気持ちに対しどんなフォローをするか、また、親として落ち込まず前向きに明るい生活を送っている様子をしっかりと我が子に示せるかではないでしょうか。

 世間ではお受験と云った言葉で捉えられ浮ついたイメージがありますが、いじめや学級崩壊と云ったリスクがある以上、私学を目指される方はこれからも増える事と思います

 が、ある日(それも半年を切った状態で)受験を思い立ち、我が子の実力も知らずに受験し、悪い結果を前に落ち込むと云った受験の仕方は、幼児にとって最悪と言えるのではないでしょうか。

 もちろん、手記を寄せてくださったお母様のご長男のように、数ヶ月でも良い結果に結びつくケースもあります。が、長年いろいろな親子を前に思う事は、こちらの言う事を受験前にどれだけ実践してくださるかで結果が決まるという事です。私共はプロではありますが、当事者であるお子さんやお母様お父様がその気になってくださらなければ、どんなにこちらが頑張っても良い結果に結びつける事はできません。

 これから受験をなさろうとお考えの方は、家庭で何ができるのか、親子関係も含め、見なおしてみてはいかがでしょうか。どんなに大丈夫だと思われても試験は水物です。良い結果が得られなかった時あたふたするような試験の受け方をしないよう、日頃から何の為に受験するのか、国公立付属・私学になぜ行きたいのか、良い結果が得られなかった時の事も含めよく話し合われる事が必要なのではないでしょうか。

 逆に言えば、よく話し合いがなされご家族の中に迷いがなければ受験への毎日を充実したものとすることができ、必ず良い結果に結びつくと言えます。

                               (文、 福岡 潤子)

付記

  この文章を書いた後、某○○会に通い白百合幼稚園を3年保育2年保育と受験したがだめだったという方が訪れ、面接を致しました。

 最初の時は10月生まれ以降の方は受からなかったのでダメであった、翌年は自宅が遠かったのが原因ではないか、とご自分で分析なさっておられました。が、理由はそれだけでしょうか。

 このような情報化社会では知名度や何人合格したかといった事で塾・幼児教室をお選びになる方が多いようですが、その事と入室後我が子が受験で良い結果をあげられるほど成長し、様々なスキルを身につけるかは全く別のことなのです。

 その辺をよくお考えになる事が、良い結果に結びつける上で大きいと言えるのではないでしょうか。

 

     

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