家の持つ役割
 成人式でとうとう逮捕者が出ました。彼らは身体は大人でも精神年令が低く成人とは言えない、と思うのは私だけでしょうか。おそらく自己責任を追求される事もないまま今日に至ったのでしょう。このような成人が作り出されるのは、家そのものが家庭つまり人を育てる場としての役割を果たさなくなった結果とも言えます。

 社会の責任、家庭の責任と言われますが、取り沙汰されるだけで、具体的にどのようにしたらよいのか提示されていないのが現状です。そんな中、思い通りに育たない子に対し両親の心が子供から離れ、生活は共にするけれど親子とも本音で向き合わない家庭が増えている事に、危惧の念を抱いております。

『思い通りにさせないと家庭内暴力と云う形で大変な思いをする』『いまさらなんとかしようとしても無駄』と諦めてしまったら、その負のエネルギーが社会にむけられるのは時間の問題です。事実、そんな事件が多発しています。

 将来一人の人間として社会生活が送れるようさまざまな事を学習する場としての家、その機能について見つめなおし、幼児と接していきましょう。

@ 基本的生活習慣を身につける場

基本的生活習慣が身につくか否かは、生活や人生を左右する、と言っても過言ではありません。特に挨拶は、社会生活を送る上で特に大切です。 

A 生活をしていく上での知恵を身につける場

 知恵と呼ばれる部分の多くは、その道具が無い時にどのようにしたら良いのかなど、日常生活の手伝いなどの体験の中で養われます。巧緻性が高くなるだけではなく、具体的にものごとをこなす際、優先順位を考えて行なう習慣も手伝いの中で同様に育っていきます。

B 人に対する信頼感を育てる場

 両親を信頼することが、人を信頼する第一歩です。相手が幼児だからと、親の都合で言う事をころころ変えては信頼感は育ちません。子供に何を伝えたいのか何が子供の為になるのかなどを前提に、親の価値観を子供に伝えましょう。

 今の子供たちは『理解されていない』という思いを持っていると言われています。人は自信を失いかけた時、自分や人を信じる事で救われます。身を守る判断力を身につけると同様に、人を信頼する事の大切さも幼児期に知らせましょう。

C 困難な事に当たる精神力を育てる場

 習い事や社会生活の中で養われる精神力もありますが、日常生活の何気ない行動の中で育つ精神力もあります。そんな場を見過ごさないよう、気を付けて生活をしましょう。

D 自分史(心のアルバム)を作る場

 食事風景を描かせると、一人ぼっちで食事をとっている絵を描く子が多いそうです。毎日に流されないよう、幼児の心に出来るだけ豊かな風景を残すよう努力しましょう。

 

 この文章は、毎週オムニパークで保護者にさし上げているプリントの一部です。@からDを掘り下げ実生活の中で具体的にどのような事に配慮したらよいのか、お話ししています。みなさんは、このページに書かれている事をヒントにお考えください。

 家族の一員として気持ちよく付き合える人間に育つ事が、社会の一員としても必要な要素である事は間違いありません。心穏やかに日々を過ごすような子を育てるには、互いに一人の人間として向き合う事が大切です。

 成長の過程の中では思い通りにならない時期もあるでしょう。でも諦めてはいけません。社会の一番小さな単位としての家庭が、少しでも正常に働くようになることが、皆の幸せにつながり、やがて自分に返ってくる事だと私は思います。

      

             (文、福岡潤子)

                                        


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