脳が楽しい

(保護者用プリントから) 

 昔から、「十七・八は箸が落ちてもおかしい年頃」、「年を取りすぎると感情に対する感性が鈍る」、と云うような事が言われています。その点赤ちゃんはよく泣きますが、必ずしも悲しくて泣いているわけではありません。

 大人の場合泣くのは余程の時なので、赤ちゃんに泣かれるとつい感情移入してしまい、泣き声を聞いているだけで哀しくなってしまう人も多いかと思います。

 少し成長すると良く笑うようになりますが、その笑顔を見たさに何でも言う事を聞いてしまったり、「嫌がる事はさせない」という大人がいます。でも、それも不思議ではないと思わせるぐらいの力を、赤ちゃんの笑顔は持っています。

 が、そのように育つと望ましい成長を得る事はできないというのはご想像の通りで、家庭内暴力や社会に対し適応できない子供を量産する土台になっていると言っても過言ではありません。

 我が子がかわいいと思うがゆえにしてきたことが、結果的に自分たち(親)に対する危害と云う形になって現れたとしたら、不幸以外のなにものでもありません。

 先日ある先生から「4〜5歳児に大好きな絵本を読んであげたのだけれど、いかにも嬉しそうな表情の子とそうでない表情の子がいました。その反応の違いをどのように捉えたら良いのでしょうか」という質問がありました。

 「わたしとあそんで」という絵本で、女の子が自然の動植物に目を向け自分の周りの者が皆自分の友達だと云う事を認識、そのことに幸せを感じるという話です。絵は比較的写実的に描かれていますが、登場人物はページを繰るたびに現れると云う繰り返しの絵本と言えます。

 私は先生に「精神的に幼い子達は繰り返しの面白さを楽しいと感じ、うれしそうにしていたんではないかしら」。「○○ちゃんたちは、表情こそ楽しそうにしていなかったかもしれないけれど、頭の中ではその絵本を充分楽しんでいたと思うわよ。でも、絵の情報量が多いので、見る事に集中していたのではないのかしら」と答えました。

 そして、「試しにもう一度小学生の子供達に読んであげて、表情をよく観察してみたら」とも言いました。すると、習字を習いに来ている小学生たちに読んだあと「先生、本当にその通りでした。皆真剣な表情をして見ていましたし、終わった後に、ため息まで聞こえたんです」と、その先生は目を輝かせて報告してくれました。そして、小学生たちの表情が満足そうであったも付け加えてくれました。

 子供の楽しいと云う表情は大人を幸せにさせます。その表情にばかり目がうばわれがちですが、実は見えない脳が満足し、楽しいと感じる感じ方もあるのです。それをいかに引き出す事ができるかどどうかが、精神年齢に大きく作用します。

 最近、テレビで「前頭葉の発達に家族関係が大きく作用し、過保護に育つと前頭葉の発達がみられない」と紹介されていました。公共の車内でお化粧直しをしたり、すぐにキレル若者は前頭葉が発達が遅れているとも言われます。

 長年幼児教育の現場で幼児と接していますが、2歳の幼児で、いつもできていることでも「(自分は)赤ちゃんだから、できない!」と、言う子もいれば、「(自分は)赤ちゃんじゃない!」とがんばる子もいます。このように幼いうちから精神年齢の違いは確実に現れます。

 4〜5才になって入室してくる幼児の中で、知識が豊富で自分の考えは表現できるのに自分の意思を相手に伝える(何をしてほしいのか等)のが苦手な子はたくさんいます。きちんと言わなくても周りの人間が理解してくれてしまい精神的な成長がそれに伴わないためです。また、巧緻性が育っていない子も多くみられます。手先が不器用だと人の手を借りなければならない場面が多くなり、依存心(精神的な甘え)が強くなってしまいます。

 大脳生理学的に見て巧緻性を育てることは脳の活性化につながります。どうぞ、見せかけだけの楽しい毎日を演出せず、脳が楽しいと思える時間をたくさん作ってあげてください。そのことが生きる力につながるという話を次回ご紹介いたします。                               

                           文、福岡 潤子

 

     

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