「幼稚園教員の質向上へ提言 文部科学省協力者会議」

         

 幼稚園教員の資質を向上させる方策を検討していた文部科学省の調査研究協力者会議は6月24日、他園研修や公開保育などで実践的な力、専門性の向上を図るべきだとする報告書を提出した。文科省は今後の施策に反映させるとしている。

 多くの教員が実務経験がほとんどないまま採用される反省から、養成段階では幼稚園でのインターンシップを授業に位置づけ、現職教員や園長の講義を聴く機会などを増やす。採用段階では、社会体験を重視し、試用期間中に適性を厳正に判断して適格者の確保に努める、とした。

 現職教員に対しては、専門性を高めるため、上級免許や小学校教員免許の取得を促す。公開保育や専門家のアドバイスを聞く機会、公私立幼稚園の枠を超えた交換研修、他園研究などを増やす事を提言した。

                                

 幼稚園に行くようになれば、集団生活で必要な要素を身につけられると期待しておられる方も多いと思います。が、その現場の教員の資質に問題があるというのは、なんともショッキングな話題です。若い頃幼稚園教員だった私からすれば、今日の教育現場の現状についてお気づきになるのが遅すぎた、とさえ感じます。

 実際、お母様方から寄せられる悩みの中に、資質を疑ってしまうような言動の教師がしばしば登場します。また、資質はあっても指導するスキルがないため正常なクラス運営がなされていないことも多々あります。

 私の持論「出産は本能・子育ては学習」ではないですが、教員もまたさまざまな学習をすることでプロに育っていくのです。

 実際、学生時代に教育原理だ幼児心理だと学習していても、クモの子をちらすような状態の幼児の集団をまとめあげるのは、素人同然の新米教師にはとても無理な話です。

 30年以上前の話ですが、私自身新任の一年をつつがなく過ごす事ができたのは、園で毎週カリキュラムについての話し合いがきちんとなされ、実際の指導法も伝授してもらえたことが大きい、と感じています。

 また、園内研修をきちんと行っている幼稚園に就職したか否かがその後の教師としての伸びにも大きな影響があるということを他園に移った時に実感し、最初の園に感謝の心で一杯になったことを思い出します。

 

 なぜ、他園では行われていなかったのでしょうか。今も行われているところは少ないのでしょうか。

 それは新任を指導する経験のある教師がいないからです。その原因の一つとして、井の中の蛙状態でただ経験年数だけを加えている教師を認めている事実があります。

 もう一点は経営上の問題です。幼稚園教員の給与は通常経験年数によって支払われます。ただでさえ幼児数の減少で収入が減っているのに高い給与を支払わなくてはならない経験者を雇うより、新任の方がずっと給与は安くて済みます。その結果、若い教師ばかりとなってしまいます。

 良い教師を育て良い教育を行えば、多少遠くても園児は集まってきます。園長・理事長の先見性のなさや怠慢が、教師のスキル不足を引き起こしていると言えます。

 極端な言い方をすれば今日の幼稚園の現状は、指導するスキルを持たない教師がクラスを担任し、幼児は毎日幼稚園にただ通っているだけ、学習する場ではなくなっているのです。以前文部科学省の打ち出した「個人の意思を尊重する」という方針は、クラスをまとめることができない幼稚園教師に対する免罪符になった、少なくても口実にはなったと私は考えています。

 その結果、子供たちは「話を聞く時は聴く」「説明を受ける時は、人(モノ)を見る」という学習する上での基本も身につけずに小学校に行くようになったと言えます。小学校の学級崩壊の原因はここにあります。 

 一口に幼稚園教員と言っても公立なのか、学校法人なのか、無認可なのかで大きく教員のレベルが変わってきます。公立幼稚園の場合、公開保育は日常的に行われ人の目が光っています。が、その他の幼稚園の場合、大人の目は園長・理事長の目ぐらいです。手抜きをしようと思えばいくらでもできますし、一つの園に二年居ればその後は努力なしで何年でもやっていけるのが現実です。そして、公立の教員でも公務員的な意識を持てば、良い教員と言えるように成長しないのは容易に納得できるところではないでしょうか。

 文部科学省に出された提言が実行されるのに数年、教師の専門性が高まるのに少なくても十年はかかると思われます。本人が向上心を持ち続けるか、園が独自の研修を行うかしなければ、専門性の向上はありえません。これは保育士も一緒です。

 母親や父親もまた、資質のあるなし関係無く、誰でもなることが可能です。教育を任せること不安材料が多くある今日、幼児に大きな影響を与える親としての専門性の向上を、心して取り組んでいきましょう。

                                 

                         文、福岡 潤子