プレジデント 『心の知能指数』3月1日号

特集『業績の75%はEQで決まる』つづき

(天才子育ての修羅場抜粋)

   

 最近、イノベーションの時代という事がさかんに取り上げられています。つまり、人と同じことをやっていては立ち行かないと言えます。

 有名大学を出てもそれだけではなんの意味も持たない時代になってきているということです。それより、早くに得意分野を伸ばし極めたほうが良いという成功例を多く目にする世の中になってきました。

雑誌アエラ(2/9号)「天才子育ての修羅場」という題の記事を紹介致します。

 芥川賞作家金原ひとみさん(歳)。彼女は小学校4年の時から不登校を始め中学3年でリストカット、家庭内も大変な状態。が、法政大教授・翻訳家の父親が小説の添削指導を行い、作家への道を開いた。

 中学3年で第二種情報処理技術者資格を取得、「未踏ソフトウェア創造事情」プロジェクトのユース部門で最年少の歳で採択された加藤勇也君も不登校。が、パソコンに興味を示したのを見逃さなかった父親は、教育委員長であった知り合いに指導を依頼。結果、どんどん技術を吸収し、日本の常識では考えられなかったような新人類的ソフトウェア技術者と評されるようになった。

 アマゴルファー金田久美子さん(歳)の場合、世界ジュニア選手権で4度優勝。歳以下の部に出場、8歳で優勝したのはタイガー・ウッズと並ぶ史上最年少記録。「プロを目指すには一途な精進が不可欠。今後は試練や壁にぶつかるでしょう。本人が望んでやっていることだから、必ず乗り越えられるはずです。」と、コーチで父親の弁。

 絵本作家はなえさん(歳)。人と髪の色が違うのを意識したハーフの娘に大学講師の母親がモデルの仕事を紹介。もう一つの顔、小学3年から全国小中学校作文コンクールで3年連続受賞。「自分とは何かを考えてほしかった。」「書く方面に向かわせる意識は特にありませんでした。何らかの形で表現する力をつけさせたいと思っていました」(母親の弁)。

 桑原文子さんの三姉妹は全員ジュニアエレクトーンコンクール(JEC)の入賞経験者。低学年で金賞を受賞した三女のあいさんが5年生で反抗期を向かえた時「あなたは決して一人で演奏しているわけじゃない。たくさんのお友達や先生と一緒にがんばってきたから賞がとれた。それを忘れないで素直 に謙虚に受け止めて」。「私がしたことは環境作りと舞台衣装をがんばったことくらい。娘達は自立しています。練習にも付き合わないし、コンクールも本番を見に行くだけです」と。

 どの子も、周りの大人のEQ度が高いことで成功したと言えます。親の側の社会的コンピテンスが高いことで子どもの個人的コンピテンスを高めることができ、紆余曲折も乗り越えられたのではないでしょうか。

 家庭内で、子ども達が自分の存在理由を一番感じられるのは、お手伝いをしている時です。人間は愛されたいという気持ちと共に、誰かに認めてもらいたい、という気持ちを常に持っています。それは幼児であっても同じです。

 子どもが家庭内で学ぶことは計り知れません。社会を形成している最小単位としての家族、その中で何を学ぶかはその子の将来に大きな影響を及ぼします。大人の手が必要な幼子として我が子を認識するのではなく、『幼児期の今、大人になるための学習を行っている』という認識を持ち、共に生活することが大切です

料理…(野菜を洗う・米を研ぐ)これらを行うことで指先の巧緻性はもちろん注意力も養われます。なぜなら周りを水浸しにしない、お米を流さないよう行うなどの配慮が必要とされるからです。そして、なんど失敗しても、できるようになるためには体験させるしかありません。

 (野菜や皿などを用意する)指定されたものを準備することで、指示行動ができるようになったり、モノの名前を覚える、正確に数えられるなどが期待できます。また、料理は、順番が狂うと思っているものができません。手伝ううちに優先順位を考える力が身につきます。お母さんがリーダーとなって調理をすることで、チーム能力〔協調と協力・ほかの人を理解する・共感〕を高める事ができます。また、いろいろな立体に触れ、さまざまな角度からものを見る〔立体を切る〕ことで、図形に関心を持ったり、空間把握能力も身につきます。

掃除…(掃く・拭く・しぼる)家族の役にたちたいという気持ちを満足させられる〔清潔に保つことの喜び・達成感・家族の一員であるという誇り・チーム能力〕。「お風呂の掃除なら私(僕)にまかせて!」というように、自分の得意なものを認識し、自分に自信を持てるようになります〔自己確信〕。

 このほかにもいろいろなお手伝いがありますが、子どもはいつもお手伝いをしたい気分であるわけではありません。時には自分のやりたい事を中断して手伝わなければならない時もあります。

 が、遂行する中で〔自己コントロール・誠実性〕が養われます。『これをしておいたら喜んでもらえるかもしれない』と思って行動した時は〔共感性・気配り・率先行動・自己確信→サービス重視〕が身についてきたと言えます。

 子供の行動をこのように分析すると、単に結果(できる・できない)だけをおうことは意味のないことだとお解りになると思います

 共に家事を行うことの良さは、これだけではありません。幼児が一人でできるようになるためには指導する家族とのコミュニケーションが不可欠です。

 また、これらを行う過程で、家族の力関係〔政治の理解〕を理解したり、赤ちゃんやお年寄り〔多様性の理解〕に配慮することを覚えます。また、意見の違いを修正〔対立マネージメント〕、皆で話し合うなかで認め合ったり我慢することも覚えます〔社会的スキル・自己コントロール〕

 そしてなによりさまざまな体験をする中で満足感を知ることができ、モチュベーションを高めることにつながっていきます。これが生きる力の基になると言えます。

 

                     (文、福岡潤子)


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