考える力を試す

全国学力テスト(読売新聞2007年4月25日付)

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 「求める学力 変化」「(記述式多数)応用力向上目指す」

 約233万人の小学6年生、中学3年生が取り組んだ全国学力テストが24日、行われた。学力低下の指摘を受けて実施された今回のテストには、日本の子ども達が苦手としてきた記述式問題が多数盛り込まれた。43年前に実施された同種テストと比較すると、国が子どもに求める学力像の変化も浮かび上がる。

 「国としてどういう学力を身につけてほしいか。そのメッセージを問題の形で示した。」テストの問題を作成した国立教育政策研究所の惣脇宏・教育課程研究センター長は、24日午後の会見でそう述べた。

 たとえば、小学6年の算数では、「木曜日はすべてのケーキが20%引き、日曜日は320円より安いケーキが200円。チーズケーキ(定価300円)とチョコレートケーキ(同400円)を1つずつ買う時、どちらの日に買うと、いくら安くなるか」という問題が出され、答えとそれを導く式を記述することが求められた。答えに至る方法は3通りあり、文部科学省は、現実の生活には、答えが一つではない問題がたくさんある。そのことを知ってほしかった」と説明する。

 1961年度に実施された全国学力テストと比較すると、問題の傾向が大きく異なる。当時は計算問題や読解問題を含め、すべての問題が選択式。問題数も多く、中3の国語の場合、50分の試験時間内に長文読解を含め、33問を解かなくてはならなかった。

 首都圏の大手学習塾…は、「当時は高度成長期で、与えられた問題を早く正確に処理できる力が重要視され、創造性や独創性まで求められていなかった」と解説した…。

 今回も国語と算数・数学で、漢字や計算問題など基礎的な「知識」を問う出題があったが、文部科学省が力を入れたのは、図や表を読み取るなど応用力を試す「活用」の問題だった。…

 

 

皆さんもご存知のとおり1966年を境に中止されていた学力調査が、今年再開されました。これまでも小中学生や高校生の一部では行われてきましたが、全国一斉の学力テスト再開の要因は学力低下への危機感および低年齢犯罪の増加等の問題が背景にあるのは間違いありません。戦後の高度成長期の後バブル崩壊、そして、ここ数年社会で言われているのはイノベーション・ワーキングプア・二極化です。このような社会の動きと教育は、実はとても連動しているものなのです。

 大変恐縮なのですが、私は以前より「教師は預言者でなくてはいけない」と雑誌の取材などで常々申してまいりました。なぜなら今幼児である子ども達が成人した時に世の中は必ず変化しているものだからです。ですから、今社会で要求されているものに合わせて教育するのではなく、成人した時の社会を見越して刺激をする必要があるのです。(もちろん、人間としての大切な部分はどんな世の中になっても変わらず身につける必要があります)

 今回の全国学力テストの再開による問題内容の変化は、まさにそれを実感させるものでした。なぜなら今回要求されている学力の内容が、皆様にお話している内容そのものだったからです。

たとえば、答えにいたる方法が3通りある問題について文部科学省は「現実の生活には、答えがひとつではない問題がたくさんある。そのことを知ってほしかった。」との説明です。だいぶ前の学習院女子中学の校長先生が「答えがあっていなくても問題を解いた式のセンスがよければ合格させます。」とおっしゃった言葉をオムニパークの保護者にはご紹介し、その際、それは、つまらない思考経路する子ではなく物事の本質を見極めたモノの捉え方ができる子になることとつながるというお話をしてきました。

また、年長児のお母様方には、図や表に表すことが大切なのではなく、その図や表から何を読み取るかが問題だともお話して来ました。それは何かを世の中に提供する時に、自分の考えを具現化する力が必要なのはもちろんですが、人と同じものを提供していては埋もれてしまいます。でも、どんなに良いものであっても人々のニーズに合致していなければ、やはり受け入れてもらうことはできないからです。つまり、いろいろなデータの本質を見極める力が必要だからです。

日本は成熟してきており、今後数十年たっても今回要求されている部分は必要とされると思います。が、あえて今まで以上に教育という観点でクローズアップされるくるものは何かと言うと、それは「心が育つ」という部分です。極端に言えば、学校内で教育勅語を唱える日がくるかもしれないということです。是非論は別として、それだけ今の教育の中で育つ子どもの心が貧困だということだと思います。

教育の根本は人間として育つということです。今の教育ではこの当たり前の部分が育ちにくくなっていることを認識なさり、ご自分のお子さんの学力という目線ではなく、将来社会に出たときに必要とされるものは何かといった目線で、何を伝えるべきなのかをお考えいただければと思います。

                                             福岡 潤子