幼稚園無償化

以前から幼少連携という考えから、5才児の無償化が取りざたされていました。

しかし、それに伴い5才児が義務教育化されるのではないか、幼稚園の枠組みの中からはずされるのではないかとの思いから、幼稚園側の大きな反対がありました。

今回、文科省の「今後の幼児教育の振興方策に関する研究会中間報告」が5月18日に出されましたが、その中ではっきりと「幼稚園教育の無償化について」協議され、幼稚園および認定子ども園の幼稚園機能部分を無償化されるべきとの判断がくだされました。幼児教育の無償化は国家戦略上の喫緊の課題だと明記されています。

もちろんまだ法案として通ってはおりませんが、通れば国から幼稚園に直接保育料が支払われることになります。注目すべきは、なぜそのような答申にいたったかという事です。答申をご紹介します。

「はじめに」-----幼児期の教育は生涯にわたる人格形成の基礎が養われる重要な時期であり、子どもの心身の健やかな成長を促す上で、「生きる力」を育成する事はきわめて重要な意義を有している。

 こうした認識の下、改正された教育基本法では、新たに「幼児期の教育」が規定され、国及び地方公共団体は、幼児の健やかな成長に資する良好な環境の整備その他適当な方法によって、その振興に努めなければならない-----

 一方、近年、先進諸国を始めとした諸外国においては、幼児教育を、教育的効果が高いだけではなく、社会経済的な投資効果もきわめて高い公共事業としてとらえ、国策としてそのコストを社会全体で負担する「無償化」の取り組みを加速させており、今や幼児教育の無償化への取り組みは世界の趨勢である。

 資源に乏しいわが国が将来にわたり持続的に発展していくためには、子どもが持つ大きな可能性への投資が極めて重要である。国際競争力の維持・強化の観点からも、社会経済に大きな影響を及ぼす幼児教育の無償化は、----

 幼児教育は幼児の望ましい発達をもたらすという教育的効果のみならず、社会経済的効果を輸しており、その波及効果は社会経済全体に及ぶものである。---

 諸外国において、米国でのペリー就学前計画における研究を始め、英国やニュージーランド等での大規模追跡調査などで、質の高い幼児教育が、その後における成績の向上や進学率の上昇、所得の増大、犯罪 率の減少をもたらすなど、教育的社会経済的効果を有するとの実証的な研究成果が得られている。----

 幼児教育は、「後伸びする力」を養うことを念頭において、将来への見通しをもって、生涯にわたる人格形成の基礎を養うものである。

 一連の研究成果では、幼児教育は外形的に図ることができるような能力(認知的能力)の上昇のみならず、意欲、忍耐、根気などの能力(非認知能力)を育み、これが小学校就学後、成人後にも大きな効果をもたらずものと考えられている。---

 また、脳科学の分野でも、一般に、脳の生理学的な発達に連動して、それぞれの脳機能ごとに、環境や訓練・学習により、脳の構造・機能が大きく変化しやすい感受性期(臨界期)が存在することが分かってきている。

 そして、この脳機能の感受性期の多くが、幼児期に存在することが明らかになってきている。このように、幼児期は人間の発達にとって重要な時期であり、幼児教育の重要性が科学的にも裏付けられてきている。---

 

  いかがでしょうか。質のよい幼児教育は、生涯にわたってその子どもに影響を及ぼし、結果的に国や社会全体に対してまでも影響を及ぼすということを言っています。

 単に幼稚園受験・小学校受験だけの問題ではないのです。文字通り後伸びする力を養うには、幼児期にしっかりと脳そのものを鍛えておく必要があると言えます。それは、ペーパーをやることではありません。

 生活すべてが幼児にとって学習の場であることや、幼い内に意欲や集中力を高めることが大切であることを考えると、大人が与えたり恣意的に誘導するのではなく、幼児が自ら動けるようにしておくことが大切だと言えます。でも、そのためには「まね」をすることや「善悪」が分かること、体全体を動かしたり指を思えるように使えるようになることが大事なのです。

 子どもが遊びだと感じると「楽しい!」と脳が認識します。どうぞ、顔がにこにこしているから楽しいではなく、脳が楽しいと思える遊びを見つけてください。その際、大人の概念の「遊び」と子どもの「遊び」は違うことをお忘れなく。何かをみつけてじっと何かを観察していることも、子どもの脳にとっては遊びなのですから。

 

                       (文、福岡潤子)


          

 

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