子育て支援
 オムニパークのホームページをお読みいただいている皆様には、更新が遅れ大変申し訳ございませんでした。大学院に入ったことでそれまでも何足のわらじを履いていたのに履ききれないぐらいのわらじを履いて全速力で走っている毎日です。一昨日母校の卒業式に参加、その足で新幹線に乗り岡山へ。翌朝7時半から補習を行い、昨日帰ってきたところです。

 そんななか、連休や春休みの初日ということで、家族ずれの旅行者にたくさん出会いました。大声で泣き叫ぶ幼児やつり革にぶら下がる学童の行動は目に余るものがありました。親は眉をしかめたり子どもに非難めいたことを言ってもその言動をやめさせるわけではありませんでした。

 こんな子どもばかりではないはずですが、電車内で手にした鉄砲らしきもので音をさせたり走り回るなど、公共の場と家庭との違いが分からないのかと年長児ぐらいの子どもの顔をまじまじと見てしまいました。本人はそのような目で見られているとは知らず、立っている人も多いなか、母親のほうに行ったり父親のほうにいったり。子育て支援も良いけれど、きちんと人間らしく育たない子どもには、もっと違った支援が必要なのではとつくづく感じてしまいました。

 実習にうかがった幼稚園では充実した子育て支援がなされていたので、それを簡単にまとめたものをご紹介したいと思います。「である調」なので少し文章がかたいと思いますが、お読みいただければと存じます。

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 平成196月一部改正された学校教育法の第三章幼稚園の第二十四条に「幼稚園においては、第二十二条に規定する目的を実現するための教育を行なうほか、幼児期の教育に関する各般の問題につき、保護者及び地域住民その他の関係者からの相談に応じ、必要な情報の提供及び助言を行なうなど、家庭及び地域における幼児期の教育の支援に努めるものとする。」とある。

 これを受け、子育て支援センターの役目を果たす目的で、様々な支援が幼稚園で行なわれるようになった。しかし、それはまだ始まったばかりで確立されたものとはいえない。そこで、A園ではどのような子育て支援がなされているのか、支援の実態を捉え、最近言われている「親育て」など、新しい視点での子育て支援の方向性を考察したいと考える。

 

2. A園における子育て支援の実際

1) 敷居を低くし、開放的な園をめざす

・ホームクラス(時間外保育。月曜から金曜:通常保育終了時〜600まで)

・園庭開放

   ・園長先生の部屋(保育カウンセリング)

・ハートフルデー(地域との関わり)

 

2) ママではなく、「〇〇〇子」という固有名詞のある私が出せる場を提供

・活動の場や発表の場を提供(合唱・演劇・指人形など)

 

3) 幼稚園は楽しいところ

・〇〇先生と遊ぼう(未就園児向け)

・ちびっこランド(未就園児向け)

     活動  自由遊び

         お片づけ

         手遊び

         ペープサート

         サンタクロース作り

         ソリ遊び

         おやつ

 

3. 考察

A園では時間外保育や園庭開放のほか、幼稚園を母親達の活動や発表の場として提供している。これは出産以来「〇〇ちゃんのママ」とよばれている母親達に、「固有名詞としての私」を表現できる場となっていると思われる。

また、地域の人材やサークルと関わる日としてハートフルデーを設け、地域との交流も行なっている。これは孤立しがちな若い母親達に、地域と係るきっかけを与えることになると思える。また、園内の図書整理をするなどの活動の場を与えるなど日常的に場を提供し、クリスマス会など活動の発表の場も設けるなど、幼稚園が母親達にとって居やすい環境作りをしていることがうかがえる。

 A園の子育て支援の特徴は、園長先生自らが「〇〇ちゃんの部屋」という相談室を行っていること、未就園児対象の「ちびっこランド」という親子教室を主宰していることではないだろうか。園長先生自ら教材を準備し、環境を構成し保育者として未就園児やその母親と係っていた。保育者としての姿はベテランの保育者そのものだと感じた。

「園にきて、友だちと関わることの楽しさを知ってもらえればと思っています」との園長のお言葉。幼い子どもの母親たちに、子どもに関わる援助者としての姿勢を無言のうちに提示していると思えた。

また、子どもの援助の仕方をさりげなく母親達に伝えていた。このように保育者をモデルとして子育てを実践していく、子どもと楽しく関わる体験を持つことは、子育てに重要な意味をもつのではないだろうか。

子どもの嬉しい顔・楽しそうな顔を見る事は、一層子どもをかわいいと感じることにつながり、子どもとより関わりたい、育児を楽しみたいという意欲にもつながると、推察できる。これは親育てそのものなのではないだろうか。  

 このように考えると、「親育て」と言いながら、親自身が育とうとする意欲を引き出す「親育ち」の視点のほうが、子育て支援にふさわしいと思える。

 しかし、A園の園長のような保育を通して親育ちを援助できるような保育者を今後どのように育てるかが課題なのではないだろうか。今行なっている保育を、より質の高いものとしようと努力する保育者、子育てに自信のもてない保護者に対し、その思いを理解しようとする姿勢をもち、相手の求めているものを知ろうとし、応えようとする保育者が育つことがなによりも待たれるのではないだろうか。

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 先日、スクールカウンセラーとして幼稚園の謝恩回にご招待いただき、参加させていただきました。子ども達が運動会のときに踊ったソーラン節をお母様方が踊られたのです。そろいの衣装にきれのある踊り、みなさん活き活きとしてらっしゃいました。また、漁師に扮したお母さんは顔にひげを描きすました顔で櫓をこいていました。蛸や魚に扮したお母さん達もおどけた顔をしてみせたり、まさに千両役者でした。

 見ている子どもはもちろん、踊りに加わらなかった保護者も教師も皆楽しさにおおはしゃぎの一時となりました。そして最後の横断幕には「〇〇幼稚園に入ってよかった」の文字がありました。

 卒園児のお母様方、皆さんはしっかり育っておられます。今後の子ども達の成長・発達に乾杯!

                               文・福岡潤子