5月29日

 NHK「白熱教室」海外版第2弾  

 

教科書が大きく変わり、これまで以上にコミュニケーションのスキルや自らの考える力を求められるようになってきています。当然授業内容も変化していますが、その見本となるような番組(題字)をご紹介します。

 

「政治家、企業経営者を多く輩出してきたハーバード大学に対して、シリコンバレーのあるスタンフォード大学はIT・バイオなどチャレンジ精神にあふれた、数多くの企業家を送り出しているのが特徴です。

ティナ・シーリグさんはその工学部「テクノロジーベンチャープログラム」のエグゼクティブ・ディレクター。このプログラムは地球規模で突きつけられた深刻な課題の革新的な解決策を生み出すことを目指している。

…彼女の真骨頂は徹底したブレーンストーミングで発想の展開を図り、そこから生み出される革新的なアイデアから、新たな技術や企業を育てることにある。…異質なことに挑戦する精神を語り続け、学生たちと白熱した議論を展開します。」(番組概要・ティナ・シーリグ氏紹介欄から抜粋)

「徹底したブレーンストーミング」とありますが、まさに皆の知恵を出し合うものでした。出されたテーマは「地球に関するメッセージを4枚1組のカードにする」というもので、学生達はいくつかのグループ(一グループ3〜4人)に分かれ、早速、意見を出し合っていました。 

地球を構成する自然要素からエネルギーに。REがついた言葉4つをカードに書き、そのまま土にさすとそれぞれの絵の花が咲くなど再生可能に。それぞれのグループで話し合ったことが次ぐ次にカードに表現されていきました。

また、カードを買うことでポイントがたまり、そのポイントを使い、またカードが買えるなど、カードの作成だけにとどまらず、その先を考えたグループもありました。

カードのアイデアやコンセプト・使い方の説明を、いかにもプレゼンという感じで行うグループも多いなか、コント風に表現したグループは、それだけで人の心をつかんでいると感じさせてくれました。

その後、学生達が他のグループのなかから一番だと思うグループを自ら選出しました。一番になったグループのカードは、地球環境によくない事柄が書かれたポストイットが何枚も貼られています。それを一つずつ剥ぎ取っていくと地球の素晴らしい風景が描かれたものが表れるといったものでした。

「自分の手で剥ぎ取るという行為をすることで、直接、地球に良いことをしたと思えること、カードを開いたときに次に自分のなすべきことが具体的に書かれていることが良かった」と、投票した学生達は言っていました。

学生達は30分という短い時間のなかで4枚のカードを作成しなければなりませんでした。そのため、「立ち止まっている時間がなかったことが、かえって良かった」との感想がありました。

教授は、最初にカードありきではなく、そこにストーリーが必要で、聴衆はストーリーを聞きたがっている、とまとめていました。

学生達が自ら考え、互いに意見を出し合い、目に見える形にしたものを元に、プレゼンテーションを行う。そこには自然とリーダーが生まれ、手足となる者がいました。しかし、それは自然な動きにみえました。

発表後、皆の表情からは共同したという達成感が感じられました。

「参加した学生達は意見を言うことを当然として発言している。人の意見を聞く耳をもっている。考えたことを言葉やモノで表現することができる。役割分担のなかで自分は何をすべきかわかっている。なにより、日頃から問題意識をしっかりもっている」ことを、改めて感じました。とりもなおさず、人種は違っていても互いを一人の人間として尊重しあっている、その言葉に尽きるのではないでしょうか。

日本には「出る杭は打たれる」という諺や、人の目を気にして意見を言わない風潮が、いまだに文化としてあるように思います。幼い頃から、その年齢なりにまわりの事象に興味や関心をもち、自分なりに感じたり考えたりしたことを、自分の言葉や絵で表現できるように援助する必要性を改めて感じました。

その際、環境設定だけではなく、一人ひとりの発達にあった言葉かけの重要性があると考えます。これからもその大切さを保護者に説き、そのスキルが向上するようご指導していこうと思いました。

                                       福岡 潤子