11月3日
コップを倒した時

一口に幼児と言っても十人十色、そこにはさまざまな行動パターンが見られます。子供同士がトラブルを起こした時、上手に相手をなだめて丸く治める子もいます。反対に自分が悪くても認めようとせず、かえって相手を責める子も。


 このような違いは、単に性格の違いからだけではなく問題解決能力の差も大きいのです。例えばお弁当や給食の時、誤ってコップを倒してしまい皆から非難を浴びた時。

 倒した子のパターンとしては@、自分は関係ないと涼しい顔 A、ただただ困っていて何もしない B、「ごめんね」とだけ言う C、教師に「こぼれちゃったあ」と知らせる D自分で雑巾を取りにいき、拭く。そして皆に謝る E、Dに加えて教師に事後報告を行なう。


 @Aは事態に対し、何も行動していません。何でも依存している精神的に幼い子供達は、『なんとか事態を収拾しよう』と思う、こんな当たり前の事さえ出来ません。Bは事態を把握し周りに対し配慮はしていますが、起きた事に対する処理はまったく行なっていません。Cは事態に対して処理をする必要は感じていますが、他人に事態を報告しているだけで何をして欲しいかを依頼していません。


 いかがでしょう。あなたのお子さんは@からEのうちどれだと思われましたか。できればDかEであってほしい、でも、放っておいてもそう育つ訳ではありませんね。


 まず、こぼしたら拭くという解決方法(処理の仕方)を学習させましょう。幼い子がコップを倒した時、母親は口で叱りながらも当然のこととして拭いてしまう。これではいつまでたってもDにはなりません。「こぼしたら拭く」事は解っていても「拭き方」を知らなければ拭きとる事は出来ません。びしょびしょの雑巾はたれるという事を知らなければ、運ぶとき床にポタポタ水滴が落ちてしまいます。


 母親にとっては無意識にしている事でも、幼児にとっては大変な学習のすえできるようになるのです。こういう時はこうすれば良いという事を実際に本人にさせているかいないかで、この差が出てくるのです。


 こぼした時「ごめんね」と言ってすぐに雑巾で拭ける子と濡れている事態を処理できない子では周りの心象はまったく違ったものとなってしまいます。幼児はいつまでも親の保護の下にいる訳ではありません。早ければ3年保育(幼稚園)、あるいは0歳児保育(保育園)という形で、親の知らない時間の過ごし方をするようになります。もちろん母親の代わりに教師や保育士がいるのですが、家のように何かあったらすぐに駆けつけてくれるという訳ではありません。いやでも自分で考えて(?)行動しなくてはならず、その行動の結果も甘んじて受けなければならないのです。


 集団生活の中では、「皆と仲良く遊べる子」である事、些細な問題が起きた時に「事態の処理の仕方を知っている』事、そして「その方法を実践できる」事が大事なのです。言い古された言葉ですが、良い生活習慣の一つとして「身の回りのことは自分でする」自立ことが余計なトラブルを避けるコツです。 

目の前で起きたことを親が処理することは簡単です。が、これから巣立つ幼いお子さんをお持ちのお母さん、将来我が子が困らないためにも今一度日常生活を見なおし、一人でできるようになるための手助けを是非、今すぐ実践してくださいませ。
                           
                       (文、福岡潤子)