3学期のテーマ 『世界』から

 

 オムニパークでは3年間を1つの周期として、九つのテーマを学期ごとに学習します。一つのテーマを毎週少しづつ掘り下げることにより、子供たちの興味や関心が深まります。

 また、私の考え方や「幼児とは」「母として」といったことをプリントにして毎週保護者の方々にお渡しし、補足を交えてお話ししております。

 平成10年度3学期のテーマは「世界」。それによせる思いを書いたプリントをご紹介します。

 世界というテーマは子供達にとって非常に抽象的で捕らえにくいものです。ただし、アメリカ・中国と話が進むにつれ、年中・年長児の間で、次のような事に興味や関心が広がっているのが、感じられるようになりました。自分達が地球上に住んでいること、地球儀の上では小さな日本が「自分の国」である事、それを取り巻く他の国々がどのようなものであるかなど。

 子供達は未来の地球に大切な役割を果たします。今問題になっている環境汚染の問題もそうです。一人一人の心がけ一つで、十年後ニ十年後、百年後の地球に関わってくると言っても過言ではありません。幼児期に少しでも地球や人の暮らしに興味を持つ事は大きな意味があります。

 

 世界という言葉から、いろいろなキーワードを見つける事ができます。五大陸・国・文化・人種・産業・流通・歴史・環境・貧富・戦争・平和など、挙げればきりがありません。そのどれをとっても人間そのものと言えます。人間に興味を持つ事ができなければ、地球や世界の話を聞いても少しもおもしろい、と感じられないのではないでしょうか。逆に興味が持てていれば、そこにはおもちゃを与えられた幼児のような魅力が感じられ次々に新しい興味が生まれることでしょう。

 「人間に興味を持つ」一見簡単そうですが、意外に難しいかもしれません。最近の幼児を見ていると、人間に興味を持つ以前に自分自身に関心が持てていないように感じます。自分の楽しいと思える事を積極的に見つけようとするより、変に周りを意識しわざとふざけてみるなど、ある意味では自分を大切にする事を学んできていないように思います。

 オムニパークの幼児たちは、注意されなくても周りの空気を判断し行動する事が出来ます。それは精神的に成長しているため、我慢をすることが自然に出来るようになっているためです。その我慢とは自己コントロールで、制止や命令・強制から産まれるものではありません幼児なりに『今は、これはしてはいけない。これはしても大丈夫』と判断し、行動しているのです。

 逆に自分を持てていない子は、周りがどのような場面であっても大声を出したり走り回ったりしてしまいます。そういう子の多くは、「○○しちゃいけません!」と、言われ続けています。

 

 何を好んでいるのか、何をしたいのか、を幼児に問い掛ける事が大切なのです。そして責任をきちんと負わせる事。幼児だからと大目に見たり、母親がやるべきだと勘違いしてはいませんか。『幼いから、解らない』その感情の中には一つの偏見が隠れているとは言えないでしょうか。確かに幼児は幼いため体験が少なく考える力もあまりありません。でも、ちゃんと感情を持った立派な一人の人間なのです。

 幼い・年老いている。色が白い・黒い。金持ちである・貧乏である。五体満足である・身体障害者である。これら一つ一つは個々の違いであってそれらに優劣はありません。ヨーロッパでは、「金持ちはたまたま人より多くのお金を持つようになっただけなので、お金を持たない人達に分け与えるのは当然だ」という考え方があります。この考えそのものは受け入れ難いと感じられる方もいるでしょう。が、自分の力では抗し難い事(肌の違いなど)について、自分と違うというだけで人を認める事ができない人間には育ってほしくないと心から思います。

 「自分を活かして人を認める」事は日常の生活の中だけではなく、世界を相手にした時も同様です。子供たち一人一人が、「みんな地球に住んでいる仲間、世界は違ってもみんな同じ人間。」そんな事を感じてくれたらと思います。また、「地球がいつまでも住み良いものとなるよう生き、未来に繋げることの出来る人間」に育ってほしいと思います。

                       (文、福岡潤子)


          TOPページへ