![]() 毎年日本テレビで行われているクイズ番組。予選段階では泥んこになるなど体を張ってのクイズ・早押しクイズが売り物で、最後まで勝ち残るには番組のキャッチコピー通り三人一組で「知力・体力・時の運」を駆使しなければならない。今年の第一回戦は「石原東京都知事がうなるような案を提案する」というもの。提案以前の「このように思うのですが、どう思いますか?」といったものが多く、「実現可能なものなら、すぐにでも提案を実行する。」という都知事の言葉がむなしく響いていた。 「東京には地方からたくさんの人々が集まってきている。それぞれがそれぞれのふるさとの祭りを行ない競いあう。優勝者(県)には一年間トロフィがわりに東京タワーが貸し与えられる」という企画が出され、結果、その提案をした3人組みが勝ち進んだ。 二回戦はそれぞれが三つの課題に取り組み、3人の点数の合計がクリアすれば勝ち進めるというもの。課題は自己アピール・応用力・集中力。自己アピールの部屋はさながら入社試験面接で、その雰囲気にのまれおどおどする者あり、自分の考えをしっかりと言葉を選びながら話す者もあり。( ※1)応用力の部屋での課題は、主婦たちの前で目の前のグッズを使用し洒落を言いまくるというもの。汗をかきながらも次々に苦し紛れのしゃれを言う者あり、何も浮かばず顔面蒼白の者あり。(※2)集中力の部屋の課題は、若手芸人が邪魔をする中、アズキを箸で隣の器に移しかえるというもの。準決勝戦は、チーム全員がそろって正解しなければ得点とならず、一人でも不正解ならば得点が0になるというもの。決勝戦は稀に見る接戦だった。
![]() クイズ番組と言えば、 知識を手に入れるための知識欲・記憶力・洞察力・瞬発力が必要不可欠ですが、最近は、物事を総合的に捉え、新しいものを生み出す力まで試されるものも出てきました。これだけコンピュータが普及し、解らない事はすぐに検索し手に入れる事が可能な時代になると、社会に出てからは知識だけを要求される事はあまりないと言えます。それよりそのデータをどう分析するか、どう活かしていくかという力の方が必要とされます。その意味から、単なる知識がどれだけ自分のものになっているかを試されるわけで、クイズではないと言ってしまえばそれまでですが、高校生を対象のおもしろい企画だと言えます。 ※1 クイズ番組で勝ち残ってきた以上、語彙数あるいは知識は豊富なはずです。が、「言葉を言葉で引っ掛ける」という一番簡単そうな事が出来ないというのは、「○○と言えばなんでしょう。」というパターン的なものは頭に入っているが、他の回路は上手くつながっていない、と言えます。「端・箸・橋」といった同音でありながら意味の違うもの、その言葉を含む名詞あるいは動詞がすぐに浮かばない(おたまを見て「こりゃ、たまりまへんな」といった)※2 これはもちろん集中力だけの問題ではなく、指先の巧緻性が高いかどうかも、大きな要素。実際の入社試験にも出るところがあるとのコメントがなされていましたが、これは小学校入学試験にも出された例があります。 全員が各県の代表であり各ブロックを勝ち抜いてきた事を考えると、本番に弱いという要素はあまり無いように思えます。それより 今までと違った課題が出された時、どこまで冷静に聞く力や理解する力を持てたか、また全神経 をそれに集中できたかといったところが勝敗の分かれ目だったのではないでしょうか。また、今回要求された柔軟な発想を手に入れるには、物事を一つの方向で見る目ではなく、時には鳥の視点で見るなどの多角的な捉え方のできる目が必要です。優勝した生徒たちには何時間にも及ぶ撮影の中、集中力を途切れさせない意志の強さもあったと思います。彼らがそれらを高校生になってから身につけた訳ではない事だけは確かだ、と言えます。 今日のように不況が慢性化してくると、従来の考え方ではなく、人の気づかないところに目を向ける事が出来る人間、つまりベンチャーを生むことのできる人間が切望されてきます。そんな世の中の空気を、次代を担う高校生達に要求した今回の企画は、生半可な教育番組より余程彼らに与えた影響は大きかったのではないかと思います。
(文、福岡潤子)
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