14、苦手なものを克服させるために

最近は子供に対して偏差値というものさしだけで評価しがち、という指摘がよくなされます。それは幼児も同じでツーと言えばカーというようにすぐに答えが返ってくる子がもてはやされています。

でも、中には理解するのに時間がかかっても、一度理解したものはしっかり自分のものにする子もいますし、逆にツーカー型の子でも早とちりが多かったり、細部迄しっかり把握するのが苦手という事もあります。

どちらにしても苦手意識が一度出来てしまうと、それはストレスとなります。そして大きなストレスは、その子の自信の喪失に繋がってしまいます。

 

とかく多いと言われるストレスに強くなる事は、これからの人間には不可欠だと思います。ではどうしたらよいでしょう。

答えは適度にストレスを与え、それに慣れさせることです。心理学者でもないのに言い切ってしまうのは勇気が要りますが、4、5歳児を見ているとそう思わざるを得ないのです。

中でも4歳児は幼児期の中で一番融通の利かない厄介な年齢です。なぜなら、この時期に価値観が固まるので細かな事に対して非常に杓子定規なのです。自分の行動一つとっても良いか悪いかいちいち考えます。そんな時に友達やお母さんに不用意な一言を浴びると途端に自信を失い、苦手意識を持ってしまいます。

逆に見れば、この時期に苦手なものを認識し、適切なアドバイスを得てそれを克服できればストレスを打破する貴重な体験が出来るのです。

事実、何年か前の4歳児が絵を描く事に、とても苦手意識を持っていました。画用紙を前に何も描けないのです。画用紙を隠したり泣く子もいました。そこで私は一人一人なぜ描けないのかを探り、問題点をクリアにしていきました。

例えばどう描けばよいのか基本的な描き方が分からない子には、描きたいものを丸か四角か三角に見立てて描きなさいと教えたり、どこから書けばよいのか分からない子には一番目立つ所から描くように、といった具合に、子供にとってわかりやすく納得できる方法を指導したのです。

その結果、この子達は自信を持って素晴らしい絵を描けるようになり、その内の何人かは県展に入選し、県立美術館に飾られたほどです。

 

 ですから、「この子が嫌いだから」と言って好きな事ばかりさせる事は、決して良い事ではないのです。むしろ、ちょうど良いストレス(負荷)をかけることが大切です。次回はこの点についてお話します。

 

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