23、チャンスを活かせる子にする為に

かつて私は良い環境を設定する事が幼児にとって一番だと考えていました。しかし今は適度のストレス(負荷)をかける事が成長に不可欠だと考えます。

ある父親から我が子の卒園の際に「良い意味での負荷を沢山かけて頂いた」と感謝された事があります。日頃から私は子供を友達や父兄の前に立たせ、「今朝は何を食べてきましたか」と簡単なものから「いつどこで何をして何を感じましたか」など年齢に合わせ色々な質問をし、自分の言葉で答えさせています。

中には前に出てくる事さえ出来ない子もいます。出てきても傍らの私の手を握って離さない子、泣きべそをかきながら必死に答える子、出てくる迄に考えをまとめすらすら発表するけれど、新たな質問に頭が真っ白になる子もいます。

そんな時は「何々って思ったの。じゃ『何々です』って言ってごらん」と言うと、ホッとした顔をして真似をします。この繰り返しが『皆の前でお話が出来た』という自信に繋がります。

また制作などで時折「今やり終わらないとだめ」と、追い込む事もあります。幼児にとっては鬼に見えるかもしれませんが、そんな体験の後は皆一回りも二回りも成長するから不思議です。そんな時、幼児は皆素晴らしいバネを持っているとつくづく感じます。

 

 緊張の余りチャンスをものに出来なかった苦い経験は、誰でも一度や二度はあると思います。しかし、一方ではプレッシャーを自分のパワーに昇華してしまう人もいます。ジャンプの荻原選手などは良い例です。彼らは苦境に慣れ自分を信じる力が他人よりあるのではないでしょうか。

幼児にも発表会や行事など、注目される機会があります。そんな時普段の力を発揮できない子は稀ではありません。でも「うちの子は照れ屋で、内弁慶なの」などと親が決めつけ、子供にそれを刷り込んではいませんか。

性格は持って生まれた気質とその後の環境によって作られます。一度形成された性格が一生変化しない訳ではありません。引込み思案の子でも表現下手な子でも、場に慣れさせ表現方法を体得させて行けば必ず本番で力を発揮する子になります。チャンスの度に自分を信じられないなんて悲しいじゃありませんか。

まずは、お母さんが発表会など「大変だ」と言う場面が起きたら『ラッキー、慣れるのに良い場面ができたわ』と思いつつ、「大丈夫よ。頑張ってらっしゃい」と背中をぽんと押して笑顔で送り出しましょう。

 

 

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