24、将来、必要とされる表現力

 皆さんはコンピュータを使う事を生活の一部としていると思いますが、相手が身近にいれば表情や雰囲気で伝わる部分もコンピュータでは伝わり難く、誤解も生じ易い事を経験した方も多い事でしょう。

今後情報化が進む上で、こうしたことからも表現能力の重要性がますます高まります。そこで幼児の内に表現力を育てる事はとても大切な事なのに、現状は反対を向いてしまっています。

 

 今の子供は5W1Hを入れた話し方がなかなか出来ないどころか、消しゴムを貸して欲しい時も「けしごむ」とだけ言うばかり。「消しゴムがどうしたの」と聞くと、きょとんとしています。しかし最低でも「消しゴムを貸して下さい」と言える事が大切だと知る事は、表現力を身に付ける上で大きな意味を持ちます。

そこで家庭でも、上記のように「けしごむ」と言われても、敢えてそれをどうして欲しいのかなどを明確に言わせて、言葉の表現方法をしっかり身に付ける事が大切です。

これに関連して文章においては読み手が必ずしも目の前にいる訳ではないので、相手が読んでどういう気分になるかを察したり、必要に応じて説明を文中に盛り込む表現方法を教えなければなりません。

一方で、これらとは違った意味で絵も表現方法として非常に優れています。言葉や文字の分からない外国で絵によるコミュニケーションをした人も多い事でしょう。ですから必要事項を簡単な絵で表現できるようにする事も大切だと思います。

 

しかし、そうした事を教える上で注意しなければならない事があります。元東大病院の養老猛司氏は、同じ物を見ても脳の奥に結ばれる映像は一人一人違うと話されています。これが幼児と大人では見え方に相当の差があっても当然です。つまり、大人が「良く見なさい」と言った時、懸命に見ている幼児には理解できない事が往々にしてあるのです。そこで大人は自分の見ているものが子供にはどう見えるかを探り、子供に分かる表現で気付かせなければならないのです。

絵において、殆どの場合○△□で描けると私は考えます。「車を描けない」という子に「車の形は○△□のどれか」と聞き、次いで「車のタイヤはどんな形」…。こうして描いていくと、本人のイメージに近い絵が描けていきます。

このように子供の能力やスキルを察しながら、それに合わせてコミュニケーションしながら表現力を養っていく事、これが表現力を付ける上で大切なのです。

 

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